体験記① みきの場合


統合失調症と診断されてから、2度目の通院。


病院の予約が午前中しか取れなくて微妙に凹み。
今の私には、ラッシュでぎゅうぎゅう、
周りに人がいっぱいいる電車は少々ハードルが高い。


仕方ないので母に頼んで付き添ってもらうことにした。
母もいい加減年だし、
「いい年こいて(当時30代)、
ママに頼ってなにやってんだー!」って
罪悪感がじくじくと湧きあがってくる。
くるのだが…。

電車に耐え切れなかったらどうしようとか、
遅刻してしまったらいう不安のほうが大きくて、
甘えることにした。

他に手段がないなら諦めるしかない。
たぶん、母もごめんねと言われるより
ありがとうと言ったほうが
気持ちはいいんじゃないかと想像してみる。

うーん…なんて自分勝手。ごめんね。
ここでこっそり謝っておこう。





「おくすりの調子はどう?」

今日もしっかりクスリは飲んだので、
先生の前でも以前のように震えだしたり
意味なく涙が出たりはしない。

手帳に書き止めておいた副作用の症状を
なるべくゆっくりどもらないように話す。

先生は、いくらどもっても話をさえぎったりしないし、
こちらが言葉に詰まればさらりと補って促してくれる。

今までにハシゴした医者とは違って、
とてもラクに話すことができる。

本当にありがたい。
つたないながらもなんとか各症状を訴えることができた。

ソワソワ、ウロウロなど
いくつかのおかしな症状のことを話すと、
やはり副作用だろうということだった。



先生の説明では、

エビリファイは新薬で、
脳内の情報伝達系の混乱を改善するもの。

従来の薬のようにドーパミンを
全遮断するわけではなく、
網目のように適度な調節をしてくれるクスリなのだという。

陰性、陽性どちらにも効果があるらしい。

ソワソワや不眠が出にくい薬らしいのだが、
私はバッチリ出てしまったため、
副作用止めのクスリを増やすことにした。

2、3の飲み合わせを検討した結果、
2種を併用して様子見をしてみることになった。

…副作用止めのクスリに副作用が出たらどうするんだろう。
副作用止めの副作用止めとか、出るんだろうか?(笑)



なんてアホウなことを考えていられたのはここまで。

この後の母を交えたインフォームドコンセントは、ちびっと辛かった…。

続く



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母と並んで先生の前に座り、
冊子を見ながら「統合失調症」の説明を受ける。



・脳機能の障害であること
・陽性反応と陰性反応のこと
・前兆期→急性期→休息期→回復期を繰り返し、 
 進行するということ
・病気が進めば、作業効率が落ちる機能障害が
 残るかもしれないということ

それから、
・治る病気だということ
・家庭環境や育て方のせいで
 病気になったのではないこと
※2025.5注)環境ストレスも要因であるという説もありますが、私はこう説明を受けました。

などなど。


説明を聞く母の顔は見られなかった。
心の中は罪悪感でいっぱい。

だから、治る病気と聞いて母がホッとしたのか、
それとも残るかもしれない機能障害に
落ち込んだのかはわからない。

帰りに美味しいものを
食べていこうという母に付き合い、
食事をしたりおしゃべりをしたりしたのだが、
帰って家のトイレに入って一人になった途端、
私も我慢ができなくなった。

なんだか、逃げ道をふさがれてしまった気分だ。
ウツと診断された時は特に受けなかった衝撃が、
頭の上からザッパーンと振ってきた感じ。
声を押し殺してひとりで泣いた。


本当に、治るんだろうか?
再発しないんだろうか?
母や父や弟妹に、
この病気で迷惑かけたりしないだろうか。


いずれはと思っていた自活も、
さらに遠のいた気がする。

父や弟は、にっこり笑って
プラス思考でいれば大丈夫という
(精神病に対する知識がゼロに近い)。
そのしわ寄せはすべて母にかかってしまい、
今まで以上の苦労をかけてしまうかもしれない。

正直、きつかった。




けど、衝撃でグラグラになってる頭で考えても、
きっといい答えなんかでやしないよね。
しばらくはできることからやろう。

家族に安心してもらえて、自分も楽。
これが私の理想なんだから。

今はできないことは考えない。
いや考えちゃうけど、呪文みたいに唱えてれば
そのうち考えなくなるかもしれないし。

私は私のペースで。
できることから少しずつがんばろう。



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母と正式に告知を受けたあと、
父と弟にもそれぞれ報告をした。




二人の第一声は

「なにそれ」

さすが親子である(笑)



父などは
「にっこり明るく笑ってれば
イヤな気分なんて吹き飛ぶから」
などと明後日の慰めをくれたが…
(精神疾患に関する知識がゼロなのだ)

病院が家族用にくれた冊子は
手にとってはもらえなかった。



父や弟に、働けるようになるまで
時間がかかりそうなことや、
脳の障がいであることは話したが、
どこまで伝わっているかはある意味カケ。

それでも、イヤな顔をせずに
私の説明に長々付き合ってくれたのだから、
感謝しないとバチがあたるだろう。

少なくとも、ロコツに
「恥ずかしいから家から出るな!」などと
言われないのは、私にとって救いのはずだ。



一方、母は

「理解してくれない人にまで
言うことはないから」

と連発していて、こちらが


「母は恥ずかしくて
近所に知られたくないのでは…」


とかんぐりかけてしまうほど。 
深呼吸をして聞きなおせば、
「余計な傷を受けることはない」という
意味なのだとわかったが。

私の調子が悪ければ、
確実にドつぼスパイラル一直線なきわどさだ(笑)



私にしても、まだ半信半疑で
実は誤診なんじゃないかとか、
具合の悪さや恐怖なんて全部気のせいで、
ナマケが続いていたのを
たまたま誤解されたんじゃないかとか、
受け入れられているとはとうてい言えない
状況なのである。

だから、当事者でない今の家族に
理解してくれと言っても、難しいだろう。
前途は少し厳しそうだが、
それでも、なるようになる。


今の私にできることは、

・クスリをきちんと飲むこと
・生活を改めて少しでも外出すること
・体力の低下を防ぐこと
・なりやすいという糖尿病の対策に体重を減らすこと

くらいかなあ…。

いっぺんに欲張ってもよくないから、
じっくりコトコトがんばろう。


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副作用止めのクスリを忘れて
ソワソワしてみたり、
一人昼間に散歩に出て見たり。

一週間、元気なアタマで過ごしてみて
分かったことがひとつ。


体力が全然足りない!


引きこもっていた8年は、
ほぼ寝たきり、座ったきりの生活だった。
そりゃ足腰弱ってて当たり前ってもんなんだが
それにしても…というやつだ。

具体的にどんな風に衰えているかと言うと…

・風呂に入るとぐったりHPゼロ
・30分の散歩で筋肉痛。エアサロンパスが命綱。
・階段を下りる足がおぼつかない。
・一度寝転がったら腰が痛くて起き上がれない

…われながらひどすぎる。
一応まだ30代(当時)なんだけど…‌
これじゃ80、90代のお婆さんにも
体力負けしそうだ。

筋力の無さ+運動不足×ひっきー歴で、
体の中がエライコトになってる気がして
仕方ない。

というか私の筋肉、
まだ残ってるんだろうか…(笑) 

先生にも、エビリファイを飲むためには、
糖尿病は厳禁だと言われたし、
なにより布団から起きられなくて
亀の子よろしくゴロンゴロンしている姿は、
とうてい人様に見せられたものではない。

ぷよぷよしてるのは
こんにゃくゼリーと肉球だけで十分!
目指せ普通の生活! 
ついでにダイエットも!



ということで、家族といろいろ相談。

・予約制でないこと
・費用が安いこと
・無理なく通える場所だということ
・ひとりで黙々とやっても大丈夫なこと

が条件になった。

私としては外出に慣れる目的と
コミュニケーション不足を補う意味も混めて、
散歩と絵画教室か、作業所かなにかを
考えていたのだが…


費用面と運動不足を補えないので
絵画教室は却下。


作業所はまだ障がい者手帳などの
手続きが済んでいないので却下。
あれこれ考えた結果、
スポーツジムになってしまった…。

確かに予約制じゃないし、
トレーナーがいなければ
独りで黙々とできるし、
家からも近いし、
費用も絵画教室ほど高くない。

ジムは体力増強は本家本元なのだから、
なにをかいわんや。


問題は、


私が運動が大嫌い


ということくらい…orz

いやね…、
贅沢言える身分じゃないのはわかってるけど、
運動は本当に苦手なんですよー・・・

とか心の中でささやいてみるも効果なし
(当たり前笑) 
晴れてジム入会が決まってしまった。


そして今日は、めでたい第一日目。
緊張のあまり、5時起きしてしまった…。
うう、一日目から行きたくない(笑)



・・・・トレーナーが怖い人だったら
泣いて帰ってきてもいいですか?



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1回目スポーツクラブにいってきた。



ハラハラドキドキ、
緊張で胃は痛いし手も震える。

副作用止めを飲んでいるから、
ソワソワはしないはずなのに、
朝からウロウロしっぱなし。

どうやら、緊張している時は
クスリの効き目も出にくいらしい。

気分は「はじめてのおつかい」だが、
見た目はいい大人のウロウロなので
目に易しくないことこの上ない(笑)



ついてくれたのは、
わりと優しげでシャキシャキした
女性のインストラクター。

ムキムキマッチョの
怖い男性でなくてよかった…と心底思いながら、
運動プログラムを作るための
カウンセリングを受ける。

身体データは
着衣体重 59.5kg
BMI 27.5
体年齢 50歳
内臓脂肪率 30
 
データ的にはギリギリセーフだったらしい。


見た目は思いっきりまん丸・・・というか
5ヶ月の妊婦さん並なもので、
セーフといわれてすっごく微妙。

私がセーフだったら
メタボの人、いなくなるんじゃないだろうか。

こんなんでいいのか? 
それともこれはまずアメを与えて
安心させようというワナなんだろうか(笑)


聞かれて困ったのは、運動歴。
なにせ8年間ヒッキーだ。

運動は苦手だし、
コルセット常備の腰痛持ちだし、
寝たきり老人みたいな生活をしていたのだ。


思わずドモりつつ、

「すすす、すいません、ほぼゼロです! 
半分寝たきりみたいな生活してました」

と伝えるとちょっとびっくりした顔をされたが、
すかさずニッコリと笑って
次のジャブを繰り出してきた。

インストラクター強え…。


「何か病気をされていたんですか?」

「されていたというか現在進行中で病気です」


・・・と、言えていたら、
今頃サワヤカに遊びまわっていられたかも
しれない。

が、当然というかなんというか、無理だった。


「いえ、その…ウツで…」


実は、私は統合失調症を
オープンにする気でいたのだ。

初めから隠さなければ、心労は減る。
隠しているという罪悪感も薄れるはずだった。

しかし、口から出たのは、そんな言葉。

インストラクターのお姉さんは

「あ~なるほど~了解です!」

と明るく受け止めてくれたが、
私はドツボスパイラルにまっしぐらだ。

いまさら、実は…なんて言えないし、
ヘンな目で遠巻きに見られるかもしれない。
その怖さに負けて、嘘をついてしまった。
あーあ…。

その後体幹と腰痛対策中心のメニューを組んで
エアロバイクとストレッチ、マシンなどを
ほんの少しずつ試したが、
しょっぱなから躓いてしまったことが
チラチラ頭に浮かんであまり集中できなかった。

仲良しグループでわいわいやってる
おばちゃんたち大勢の中で
ポツンと一人だったせいもあるかもしれない。

かくして、私のカミングアウトチャレンジ、
第一回は失敗に終わった。

他の病気であれ、なんであれ、
カミングアウトしている人たちって凄いなあ。



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