8年間のひきこもりから脱出する第一歩。
デイケア初日のこと。
自己紹介なんて聞いてないよ!と
心の中で叫んだ、あの瞬間。
今回は、その後のお話です。

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「みきです。統合しっちょうちょです。よろしくお願いします」

……ヤバい。

噛んだ。

よりによって、一番大事なところで噛んだ!

統合失調症、ちゃんと言えなかった。

冷や汗、たらたら。
心臓、バクバク。
なんなら、めまいまでしてくる。

世界は今、完全にわたしを見放した——


……そう思った、そのとき。

「よろしくおねがいしまーす!」

わたしの挨拶なんか、
軽やかに吹っ飛ばすような明るい声。

「服、かわいいね」って言ってくれた、
あの子だ!

その声に、どれだけ救われたか。

わたしの噛んだ言葉を気にする人なんて、
そこには誰もいなかった。
みんな、自然に拍手してくれてた。

まるで、わたしが「ここにいていいよ」と
言ってもらえたみたいだった。



……デイケア、始まってまだ10分(笑)

自己紹介という巨大な壁を、
なんとかよじのぼったはいいけれど、
すでにふらっふら。

体感、1時間半ぐらい経った気がするのに、
まだ時計の針はほとんど進んでなかった。

たぶん今日一日ぶんの運、いや、
一生分の運をここで使い果たしたかもしれない。

でも、そんなことを思う間もなく、
あれよあれよという間に、
スタッフさんの手で班分けされ、
気づけば模造紙に紙のお花を貼っていた。

何の柄だったか、
どんな色だったか、
正直ぜんぜん覚えていない。

ただ、
のりが手についた感触と、
隣から聞こえる誰かの笑い声と、

自分が「ここにいる」ことだけは、
ちゃんと記録されていた。



デイケアの初日は、たった半日。

気づけば、送迎のバスが玄関前に待っていた。

あっという間だったような、
ものすごく長い時間を生き延びたような、
不思議な感覚。

玄関で靴をはいていると、ふと外に目がいく。

笑ってくれた、あの女の子がいた。

帰りはお母さんと一緒らしく、
車のそばでわたしのほうを向いていた。

そして、手を振ってくれた。

にこにこ笑って、また、あの時みたいに。

わたしも、ちいさく手を振り返す。


今度は、あの子の名前、聞けるかな。


そんな思いが胸にふくらんで、
ちょっと涙が出そうになった。

これが、わたしの第一歩。




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